米国のサブプライム・ローン問題に端を発した2008年のリーマンショックで世界経済は大きな打撃を受けたが、各国政府の金融市場への流動性供給、
消費刺激策そして新興国の経済成長に支えられて市場はようやく正常化しつつある。当社では会社設立直後の2004年に「SRIディレクトリー」という
社会的責任投資(SRI)の実態を紹介した刊行物を制作したが、SRIは社会正義に基づく主として個人向けの資産運用手法として成長してきたものであった。
その後に成立した責任投資は、年金基金など機関投資家が参加するメインストリームの資産運用に環境/社会/企業統治などの要素を取り入れるものだが、
リーマンショック直後に刊行した「世界の責任投資便覧2009」の続編として、今回「世界の責任投資便覧2011」を制作した。
金融危機後の責任投資業界の変化や海外の年金基金、運用会社、サービス・プロバイダーの最新の動向を詳細に紹介している。
「世界の責任投資便覧」は幅広い読者を想定している。
海外投資家が既に多くの株式を保有している日本企業にとっては、海外の巨大年金、大手運用会社がどのような視点から投資先企業を選別しているのか、
投資先に対してどのようなCSRを求めているのかを知り、責任投資家に向けた積極的なIR活動・広報活動を進めるための情報として使っていただきたい。
グローバル市場で様々な事業を進めている企業にとっては、責任投資家の動きはまずリスク管理の視点から見逃せない。
欧州の巨大年金が進める環境汚染、人権侵害、不正な取引を繰り返す企業からの投資撤退は企業のレピュテーション、株価に大きなマイナスの影響を与える。
逆に、CSRの評価の高い企業やクリーンエネルギー/環境技術/水管理などの分野で世界的に優れた技術を有する企業には、年金などの持続性投資に組入れられることが期待できる。
日本の年金基金の間では、まだまだ「責任投資」は遠い世界の物語と映っているのかも知れない。
しかし、先ごろのOECDの日本の年金のあり方に関するレポートや連合のワーカーズキャピタル責任投資ガイドライン公表の動きを見ると、
それほど遠くない将来、日本の年金にも世界の責任投資の大波が押し寄せてくる可能性を予感させる。
年金業界関係者、あるいは年金運用ビジネスを狙う運用会社は、今から海外の年金基金の責任投資の実態を研究しておく必要があろう。
日本の年金基金が動き出せば、年金ビジネスを取り込みたい運用機関、調査機関も責任投資に動く。
海外では年金基金が自ら国連の責任投資原則(PRI)に署名するだけではなく、運用会社に対してもPRIに署名して責任投資の体制と能力を示すように求め、
その結果として多くの運用会社がPRIに署名し、責任投資チームを設置して責任投資に着手している。
日本の年金関係者、金融機関、アセットマネジメントの方々にも是非読んでいただければと願う。